時給。
これはヘビーな話題である。
世の中に溢れる他のパートタイムジョブと同様に、ポーカープレイヤーにとっても時給は最大の関心事ではないだろうか。
僕は、時給の話をされるといつも思い出す人物がいる。
でぇすけさん(仮名)である。
もう12-13年前の話になるが、
僕が大学1年生のとき、コンビニで夜勤バイトをしていたことがある。
場所は、都営大江戸線沿線にあるローソン。
昼は賑わい、深夜は閑散とする、至って普通の地下鉄地上出口にあるコンビニである。
ここで出会ったのが、バイトの先輩だったでぇすけさん。
僕より4コくらい年上で、コンビニの夜勤一本で飯を食っているフリーターだった。
夜勤は二人一組。
でぇすけさんは週6でシフトを詰めているような人だったので、週3程度で夜勤をしていた僕ともよく仕事が被り、次第に仲良くなっていった。
このでぇすけさん、ちょっとお茶目な人で。エピソードには事欠かない。
一時期は、肩ぐらいまで髪を伸ばしていて、全部頭の上で束ねてパイナップルのような恰好をしていた。
本人は「ちんぺー、ちょっと髪が伸びすぎて邪魔なんだよー」と言っていたが、邪魔ならそもそも切ればいい話で。
「彼のあのパイナップルみたいな頭。罰ゲームか何かですか、、、?」とお客さんから尋ねられたことがあるくらい、パイナップルヘッドは異様な恰好だった。
また、こんなこともあった。
僕が夜勤ででぇすけさんとコンビを組んでいた日、ある酔っ払いが店の中で僕に絡んできた。
僕の何が気に食わなかったのか知らないが、客はパスタを僕に投げつけ、結局警察沙汰にまで発展した。
そんなときも、でぇすけさんはビビッてしまったのか事務所から一歩も出てこなかった。
そんなお茶目なでぇすけさん。
意外にも仕事ぶりはまともで、接客の他に、発注や新人指導など、店長に一通り任されていたようだ。
しかし、数年先輩とはいえ、時給は僕と大差なかった。
夜勤で1時間1千円程度だろうか。1日10時間働いて1万円。
しかし、僕は10万円程度のバイト代だったが、月に20万円超稼いでいたでぇすけさんは羽振りがよかった。
パチンコやスロットが好きで夜勤明けによく通っていた。
また、夜勤明けに通う彼の大好きな遊びの一つに、風俗があった。
そう、でぇすけんさは、
風俗が大好きだったのだ。
ある日、
コンビニ夜勤もそろそろ終わろうかという朝方に、こんなやりとりがあった。
でぇすけさん(以下D) 「ちんぺー。俺最近面白い風俗見つけてさー。ちょくちょく通ってんだよねー」
miyuki(以下M) 「へーそうなんですか。歌舞伎町ですか?」
D 「そうそう。この辺だとやっぱ新宿だよね」
M 「どういう系統ですか? 風俗っていっても色々ありますよね」
D 「まあ、簡単に言うと、“おさわり”だね」
M 「おさわり」
D 「僕が通ってる店は普通のおさわりじゃないんだよ。凄いんだよ。」
M 「ほう」
D 「時間以内だったら、本番以外何をやってもいいんだよ!」
M 「へー」
D 「昨日も夜勤明けに行って、10分間楽しんでしまった。今日も夜勤明けたらいってくるよ」
M 「・・・。結構ハマってますね。ちなみに、お値段はいくらくらいなんですか?」
D 「1分1000円だね」
1分1000円!
そんなおさわり風俗に10分で1万円払うなら、40分2万円くらいの普通の風俗行けばいいのでは、、、?
という考えがまず頭をよぎった。
しかし、それより衝撃的だったのが、
でぇすけさんは、
コンビニの夜勤で時給1000円の条件で10時間働き1万円を得て、
その金をたった10分間で消費しているという事実だった。
600分で得たものを、たった10分に凝縮。
この人、人生を1/60に圧縮してる!
そんな衝撃的な話を聞いた後、
あまり上手い返事ができなかったのを覚えている。
時給時給、という話題になると、このときのでぇすけさんのおさわり風俗の話がいつも脳裏をよぎりる。
めっちゃうれしそうな顔して話してたな~彼。
自分で稼いだ金をどう使おうが自由だもんね。
結局、
悲しい結末になるが、
僕がコンビニバイトを辞めて数年後、でぇすけさんは店の金に手を付けてしまいクビになってしまったようです。
でぇすけさん、今もどこかで元気でやってるかなぁ。
彼はどんな世界を見たのかな。
風俗の名前だけでも聞いておけばよかった。